相手の所在が分かる・所在不明のケース別【家を出て連絡の取れない相手との離婚】
配偶者が家を出て連絡が取れなくなってしまった。
離婚したいのに話すらできない。
こんな状況に陥っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このような状況下でも離婚をあきらめる必要はありません。
今回は、家を出て連絡が取れない相手と離婚する方法について解説します。
1 離婚するための3つの方法
離婚する方法は、主に以下の3つとなります。
1-1 協議離婚
まずひとつめの方法は協議離婚です。
協議離婚は、どんな事情であっても夫婦の間で合意ができれば認められます。
ただし、協議離婚届に夫婦双方の署名捺印が必要なので、実際に会うかあるいは郵送などで書面をやり取りする必要があります。
そのため、相手が所在不明のケースでは協議離婚は難しいばあいもすくなくありません。
1-2 調停離婚
配偶者が協議離婚に応じず、それでも離婚したい場合でも、すぐに訴訟を起こすことはできません。
離婚には原則として「調停前置主義」が採用され、裁判を起こす前に調停で話し合いによる解決を試みることが必要とされているのです。
そのため、協議離婚ができない場合には、まず、家庭裁判所に離婚調停(実務上は「夫婦関係調整調停」と呼ばれます)を申立てることが必要となります。
調停では、主に調停委員の仲介により、夫婦間で離婚について話し合いを行います。
その結果、離婚に合意できた場合には、調停成立となり、離婚することができます。
合意できなかった場合には、調停は不成立で終了となります。調停不成立になっても、どうしても離婚したいという場合には、離婚裁判を起こすことを検討することとなります。
1-3 裁判離婚
協議でも調停でも離婚できなかった場合には、離婚裁判を提起して裁判官に離婚を命じてもらう方法で離婚をすることになります。
しかし、民法上、裁判離婚ができる原因は、以下の5つに限定されています。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
相手が家を出て連絡が取れないケースでは、イ、ウに該当する可能性が生じる場合があり、また、別居期間が3年から5年程度継続した場合には、オに該当するとして、裁判で離婚できる可能性があります。
2 連絡の取れない相手との離婚したい場合
以下では連絡の取れない相手と離婚したい場合に、どのような方法を採るべきかについて解説します。
2-1 相手の所在が分かる場合
連絡はとれないものの、所在が分かっている場合に離婚するためには、①弁護士に依頼して協議離婚を試みる、 ②裁判所に離婚調停を申し立てる、③それでも相手方が無視をする場合には離婚訴訟を提起するといったステップを踏むことが考えられます。
2-1-1 弁護士に依頼して協議離婚を試みる
相手方の所在が分かっているのに連絡が取れない場合、夫婦同士の連絡には応じる意思がないと考えるのが自然です。
そういう場合でも、弁護士名の書面が届けば、あわてて連絡をしてくる場合があります。相手方と連絡がつかない場合には、弁護士に依頼をして、まずは協議離婚を試みると、有効な場合も少なくありません。
弁護士が代理人として協議離婚を申し出る場合には、一般的に内容証明郵便を用いて、①自身が配偶者の代理人となった旨、②配偶者が離婚したいと考えていること、③離婚の条件などを知らせて、④期限までに回答がない場合には離婚調停を申し立てることを予告するのが一般的です。
相手方の反応が、離婚には応じることを前提としているような場合には、協議離婚ができる場合もあります。
2-1-2 調停離婚を試みる
弁護士に依頼をして通知を送付したにもかかわらず相手がこれを無視している場合や、相手からの反応はあったものの離婚自体を拒絶している場合、離婚には応じるものの協議では条件について折り合いがつきそうにない場合には、調停を申し立てるのが有効です。
本人からの連絡にも弁護士からの連絡にも応じない場合でも、「裁判所」という公的機関から調停の呼出状が届くと、さすがに無視することはできないと考えて、調停に出席するケースも相当程度あります。
そこで、相手方が離婚に応じる意思を表明すれば、後は調停において離婚条件について協議を行い、最終的に調停が成立して離婚できます。
2-1-3 裁判離婚を試みる
弁護士の通知にも調停の呼出し状にも応じない場合で、1-3で紹介した裁判離婚原因のどれかに該当するケースであれば、離婚裁判を提起するという方法があります。
弁護士の通知にも調停の呼出状にも反応しなくても、「裁判を起こされた」となればただ事ではないと考えて、弁護士に依頼したり、あるいは自ら裁判所に出頭したりするケースが相当数あります。
離婚が裁判のステージになったからといって、必ずしも解決方法は判決だけとは限らず、裁判手続の中で離婚条件等について合意ができれば、裁判上の和解という手続で離婚することも可能です。
また、相手が答弁書も出さず出頭もしないという場合には、審理を終了して離婚判決を下してもらえる場合が多いです。
2-2 所在不明の場合
次に相手方が所在不明の場合に離婚する方法を解説します。
2-2-1 まずは所在を調査する。
相手が所在不明の場合、まずは住民票や戸籍の附票等を取り寄せて、現住所がどうなっているかを調査する必要があります。
住民票が移転していることがわかれば、その住所に対して離婚の意思を伝える手紙を送るなどして、離婚に向けた手続を始めていけば良いでしょう。
2-2-2 所在を調べてもわからなかった場合
調査を行っても相手の所在がわからなかった場合で裁判離婚原因があるケースでは、協議や調停の手続を飛ばして、最初から離婚裁判を提起するという方法があります。
先ほど、離婚に関しては、原則として「調停前置主義」が適用され、裁判を提起する前に調停を起こす必要があると解説しました。
しかし、所在を調べてもわからないケースでは、そもそも呼出し状を送付して相手に裁判所に出頭してもらい話し合いをすること自体ができません。
そこで、このような場合には、最初から離婚裁判を提起して、「公示送達」という方法を利用して手続を進めることができるのです。
公示送達とは、意思表示を到達されるべき相手方が不明な場合や、相手方の住所が不明な場合に、その意思表示が法的に到達したものと取り扱ってもらうための送達手続です。
具体的には、送達すべき書類を裁判所書記官が保管して、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示する方法で行われます。
そして、掲示を始めた日から2週間経過すると公示送達の効力が生じ、訴状が相手方に到達したものと取り扱われます。
裁判所に公示送達をしてもらうためには、相手方が所在不明であることを示す調査報告書や戻ってきた郵便物、不在証明書等などを提出することが必要となります。
訴状の公示送達がなされれば、離婚裁判の手続が始まり、期日までに相手方の答弁書も提出されず、相手方の出頭もなければ審理を終了して、判決が言い渡されます。
判決も公示送達の手続により、相手方に到達したものとみなすことができます。
ただし、公示送達の方法は相手方の意向を無視するものであるため、所在不明であることの調査を尽くすことが必要とされています。
3 円滑に進めるために注意することとポイントになる点
以下では、相手方と連絡が取れない場合の離婚を円滑に進めるためのポイントを解説します。
3-1 周囲に協力してもらうこと
相手方が自分と連絡を取っていなくても、職場の同僚や友人、親戚らとは連絡を取っており、居場所もわかる場合があります。
そのような人たちを通じて、居場所や連絡方法を聞いてみると、連絡が取りやすい連絡先や現在の住まいが判明する場合があります。
ただし、伝言は、夫婦間の問題に知人や親せきを巻き込んで、トラブルになるリスクがあるため、安易に依頼することは回避するのが望ましいといえます。
3-2 焦らないこと
相手方と連絡が取れない、所在もわからないとなると、自分は離婚したいのにできないのではないかと焦る気持ちが生じることもあると思われます。
しかし、先ほども解説したように、相手方の所在が不明でも、最終的には公示送達という方法を用いて裁判離婚する方法が残されています。
時間も手間もかかりますが、あきらめなければ離婚することができるので、焦らないようにしましょう
3-3 証拠を用意しておくこと
相手が裁判に出頭しないとしても、離婚原因について証拠がなければ、裁判で離婚を認めてもらうことはできません。
相手方と連絡が取れない場合には、最終的に裁判離婚になることを念頭において、例えば、相手方に放置されていることや生活費をもらっていないことなどについて、不在証明や預金通帳のコピーなどの証拠をしっかりと用意しておきましょう。
4 協議が進まない場合は弁護士に相談
相手方と連絡が取れないと、離婚をしたくても協議すら全く進まなくなってしまいます。
このようなケースでは、相手方に対して「本気で離婚を考えている」ということを、インパクトをもって示すことが必要です。
そのため、先ほども解説したように、弁護士に依頼して、弁護士名で通知をしてもらうことが有効なことが多いです。
仮に弁護士名の通知に相手が反応しない場合には、所在調査や調停申立て、裁判提起、公示送達と、専門的な知識が必要な手続が続いていきます。
相手方と連絡が取れず、離婚の協議が進まないという方は、是非一度当事務所にご相談ください。
当事務所は、離婚問題を積極的に取り扱っており、相手方と連絡が取れないケースの離婚手続にも精通しております。
是非お気軽にご相談ください。