子供が成人するまで待って離婚するのは得策?メリットとデメリットを弁護士が解説
夫婦関係が不仲になっても「子どもが成人するまでは」と離婚を待つケースが少なくありません。両親の離婚による子どもへの悪影響が心配だからです。
ただし離婚を先延ばしにするとデメリットもあるので、正しい知識をもった上で状況に応じた対応をしましょう。
今回は子どもが成人するまで離婚を待つメリットやデメリットについて、慰謝料や財産分与などの法律的な観点も含めて弁護士が解説します。
離婚しようかどうか迷われている方はぜひ参考にしてみてください。
1.子どもが成人するまで待って離婚するメリット
子どもが成人するまで待って離婚すると、一般的に以下のようなメリットがあります。
1-1.経済的に安定する
ご自身が専業主婦などで収入がない場合や所得の低い場合、子どもが成人するまでは相手と同居していると経済的に安定します。子どもの学費や塾代、習い事の費用などの教育費も払いやすくなるでしょう。
日々の生活費や学費の心配が軽減され、子どもの選択肢を広げやすいのはメリットといえます。
1-2.子どもが両親と一緒に暮らせる
離婚するとどちらかの親が子どもを引き取って育てなければなりません。
別居親とは自由に会えなくなってしまいます。
しかし子どもは通常、どちらの親とも離れたくないと考えるものです。
両親そろった環境で成人するまで一緒に過ごせるのは、子どもにとってもメリットといえます。
1-3.親権や養育費、面会交流のもめごとが発生しない
未成年の子どもがいる状態で離婚すると、親権者や養育費、面会交流などの条件も取り決めなければなりません。
双方が親権を主張すると、調停や離婚訴訟のトラブルへ発展するケースもよくあります。
協議離婚できても、途中で養育費が支払われなくなったり面会交流させてもらえなくなったりするトラブルが跡を絶ちません。
子どもが成人してからであれば親権や養育に関する問題が発生しないので、すっきり離婚しやすいメリットがあります。
2.子どもが成人するまで待つデメリットやリスク
子どもが成人するまで待って離婚すると、以下のようなデメリットやリスクも発生するので注意が必要です。
2-1.離婚できなくなるリスク
協議や調停で離婚するには、相手の同意が必要です。
今は離婚に同意していても、子どもが成人したときに相手の気が変わっていると協議離婚は難しくなってしまいます。調停を起こしても相手が離婚を拒否し続けたら、最終的に訴訟をしなければ離婚できません。
訴訟で離婚を認めてもらう「法律上の離婚原因」を証明する必要があります。法律上の離婚原因となるのは、不貞(肉体関係をともなう不倫)やDV、家出や生活費不払いなどの事情です。夫婦仲が悪くなる原因で多い「性格の不一致」では法律上の離婚原因になりません。
離婚を先延ばしにすると、相手が離婚を拒否したときに最終的に離婚できなくなるリスクが発生します。
2-2.慰謝料請求できなくなるリスク
相手が不貞(不倫)した場合、相手本人や不倫相手へ慰謝料請求できます。
ただし慰謝料請求権には時効があるので、一定期間を過ぎると請求できなくなってしまいます。
配偶者への離婚慰謝料は「離婚後3年間」請求できますが、不倫相手への慰謝料は「不倫の事実と相手方を知ってから3年以内」にしか請求できません。
子どもが成人するのを待っていると、不倫相手へ慰謝料請求できなくなる可能性が高くなります。
また配偶者へ慰謝料請求するためには不倫の証拠が必要です。
子どもが成人する頃に相手が不倫関係を絶っていたら、過去の浮気の証拠を集めるのは難しくなるでしょう。
離婚時に不倫を立証できず慰謝料請求できなくなるリスクがあります。
離婚を先延ばしする際には、今のうちに不倫の証拠をしっかり集めて保管しておくべきです。
2-3.子どもへ悪影響を及ぼすリスク
子どもにとって、両親がそろった環境で成長できるのは確かにメリットといえます。
しかし両親が不仲でしょっちゅう喧嘩していたり、片親が不倫して家の中が不穏な空気に包まれていたり、父親が母親へ暴力やモラハラ行為をするのを目の当たりにしたりするのは子どもにとって有害です。
「子どものため」と思って我慢して婚姻生活を続けると、かえって子どもを傷つけてしまう可能性があるので注意が必要です。
2-4.DVなどの被害が拡大するリスク
相手からDVやモラハラなどの被害を受けている場合、離婚を先延ばしにすることによって被害が拡大するおそれがあります。
たとえば暴力を受け続けると、大怪我をして後遺症が残ってしまう可能性があります。モラハラによって精神的に傷つけられ、重度のうつ病になってしまう方も少なくありません。
子どもに暴力やモラハラ行為を見せつけると、子どもの精神衛生上にも悪影響が及びます。
DVやモラハラなどの人格権侵害を受けているなら、子どものためにも早めに離婚すべきです。
2-5.人生の貴重な時間を浪費するリスク
子どもが小さいうちであれば、親も若いので人生のやり直しが可能です。別の人とも再婚できますし、あらたに資格を取得したり起業したりして、可能性を広げやすいでしょう。
しかし子どもが成人する頃には年をとってしまうので、やり直しが難しくなるリスクがあります。人生の貴重な時間を有効活用したいなら、離婚の先延ばしはデメリットとなるでしょう。
3.子どもが成人するまで待つと、財産分与が高額になりやすい
子どもが成人するまで離婚を待つ場合、財産分与は高額になりやすいといえます。
財産分与の対象資産は「婚姻中に夫婦が協力して築いた資産」だからです。
子どもが成人するまで離婚を待つと、その分婚姻期間が長くなるので形成資産も多くなるのが一般的です。
3-1.財産分与対象資産の例
- 現金、預金
- 保険
- 不動産
- 車
- 社内積立
- 退職金
- 貴金属などの動産類
3-2.財産分与の基準時との関係
財産分与の基準時は、離婚時または別居時です。
離婚するまで同居していた場合には、離婚時に存在した資産を前提に財産分与を計算します。仮面夫婦や家庭内別居であっても、基本的には「離婚時」の資産が対象になります。
子どものために離婚まで同居を続けたら、離婚時までのすべての形成資産が分与対象となって高額になりやすいでしょう。
一方、離婚前に別居したら別居時に存在した資産をもとに財産分与を計算します。子どものためとはいえ途中で我慢できなくなって別居した場合、別居時までの財産が対象となるので財産分与額は少なくなります。
なお婚姻中に得た資産であっても、どちらかの親や親族から相続した財産や贈与を受けた財産は財産分与の対象になりません。
3-3.扶養的財産分与が認められるケースも
子どもが成人するまで離婚を先延ばしした場合、扶養的財産分与が認められる可能性が大きくなります。
扶養的財産分与とは、離婚後一方の配偶者が生活に困窮するおそれが高い場合に一定期間、生活援助するための財産分与です。
長年専業主婦をしていた方や高齢になっていて就職が難しい方が離婚する場合に扶養的財産分与が認められるケースが多くみられます。
3-4.財産分与計算で得になる場合と損になる場合
財産分与を払わねばならない配偶者の方は、子どもが成人するまで離婚を待つと分与額が大きくなるリスクが高まります。
財産分与を受け取る側の配偶者の方にとっては、子供の成人まで離婚を待つと得られる財産分与額が高額になり、ときには扶養的財産分与も受けられるので経済的なメリットが大きくなります。
4.年金分割は多くなる可能性が高い
子どもが成人するまで離婚を待つと「年金分割」にどういった影響が及ぶのかみてみましょう。
年金分割とは、夫婦が婚姻中に払い込んだ年金保険料を分け合える制度です。
年金分割をすると、年金受給額の少ない配偶者の年金が加算され、年金受給額の多い配偶者の年金が減額されます。
年金分割の対象となる年金保険料は「婚姻期間」に応じたものとなるので、子どもが成人するまで先延ばしすると、その分移譲される金額が上がります。
たとえば子どもが小さいうちに離婚すれば月額2,000~3,000程度しか変わらない場合でも、子どもが成人するまで婚姻関係を続けると月額2~3万円程度やそれ以上の影響が及ぶ可能性があります。
年金が加算される配偶者にとってはメリットとなり、年金を減らされる配偶者にとってはデメリットとなるでしょう。
5.子どもが成人するまで離婚を待つかどうか迷ったら弁護士へ相談を
子どもが成人するまで離婚を待つなら、メリットだけではなくデメリットも把握しておかねばなりません。
離婚を先延ばしにすると子どもに良い影響をもたらすケースもあれば、悪影響を与えてしまう可能性もあります。
子どもが小さいうちに離婚すべきか成人するまで待つべきか適切に判断するには、法的な知識が必要です。先延ばしするとしても、不倫の証拠集めや不倫相手への慰謝料請求などは早めに行っておくのが得策です。
小さいお子様がおられて離婚を迷われている場合、弁護士が状況をお伺いしてベストな対処方法をお伝えいたします。茨城で離婚問題にお悩みの方がおられましたら、お気軽にDUONの弁護士までご相談下さい。