熟年離婚について考えておくべきこと
「子どもが独立したら、結婚したら離婚しよう」
今は無理でも先々の離婚を心に決めている人は少なくなく、その準備を着々とすすめている方もいます。熟年離婚とはどのようなもので、どのような準備をすれば良いのでしょうか。
熟年離婚の件数は増えています
年々増加中|離婚に占める熟年離婚の割合とは
高齢化が進む今、離婚についても大きな変化が見られていることはご存じでしょうか。実は、日本における「熟年離婚」の割合は年々増加の一途をたどっており、長年苦楽をともにした夫婦が年齢を重ねた後に離婚し、別々の人生を歩むケースは少なくありません。では、増加の実態とは一体どのようなものでしょうか。
熟年離婚の実態を数字で分析
厚生労働省によると、令和4年(2022年)の離婚件数は17万9096組で、前年の18万4384組より5288組減少し、離婚率(人口千対)は1.47で、前年の1.50より低下しています。
しかし、同居期間20年以上における離婚件数は同年38,990件であり、令和3年の38,968件、令和2年の38,981件と比較すると年々増加しています。
内訳を見ると同居期間は20~25年未満の方が多いですが、25~30年同居した夫婦の離婚が年々増加しています。高齢化社会が進む今、年齢を重ねた夫婦の決断は今後も増えることが予想されます。
令和2年(2020年) | 令和3年(2021年) | 令和4年(2022年) | |
---|---|---|---|
同居期間20年以上 | 38,981 | 38,968 | 38,990 |
20~25年未満 | 17,321 | 16,862 | 16,403 |
25~30年 | 10,517 | 10,766 | 10,829 |
30~35年 | 5,035 | 5,028 | 5,192 |
35年以上 | 6,108 | 6,312 | 6,566 |
(引用:厚生労働省 令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況 表12 同居期間別にみた離婚件数の年次推移より)
令和6年8月にはテレビ朝日の人気番組モーニングショーにて熟年離婚率が報道されました。令和4年における熟年離婚率は約22%に上り、1947年に統計を開始して以降過去最高となったことも大きな話題となっています。(※1)
都道府県別に離婚率を分析した記事(東京・埼玉・茨城の3都県に注目)もございますので、ぜひご一読ください。
参考記事:2024年最新版|離婚率を都道府県で比較(東京、埼玉、茨城の離婚状況)
(※1)参考URL:テレビ朝日 モーニングショー(2024年8月28日)熟年離婚率が過去最高に 実録 なぜ離婚を決断?&増加の背景は
熟年離婚が増える背景
熟年離婚が増加している背景には、一体どのようなことが考えられるでしょうか。主なポイントは以下の4点です。
1.長年のすれ違い
毎年公表されている司法統計では、離婚を申し立てた理由について公表しています。令和5年の司法統計における第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別を見ると、夫・妻のいずれの立場で会っても、離婚を申立てした理由の第1位は「性格が合わない」になっています。
熟年離婚の場合、定年後に夫婦の時間が増えてストレスを感じるようになることで離婚を決意するケースが少なくありません。
参考URL 裁判所 令和5年 司法統計年報(家事編)第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別 申立人別-全家庭裁判所
2.子どもがいない、独立している
熟年夫婦の場合、子どもの独立をきっかけに離婚を決意するケースも少なくありません。進学や結婚をきっかけに、夫婦関係を解消し新たな人生を模索するのです。性格の不一致や浮気など、離婚にはさまざまな原因が考えられますが子育てがひと段落を迎えると「養育費」や「親権」について争わなくて良くなるため、離婚しやすい環境が整います。子どもがいないと離婚率は高くなり、婚姻~離婚までの期間も短くなるという研究結果もあります。(※2)
そもそも夫婦の間に子どもがいないケースも熟年に差し掛かると離婚につながる場合があります。厚生労働省によると令和2年の離婚夫婦のうち、親権を行使する必要がある子どもがいない夫婦の割合は、全体の42.39%に上っています。この数字には子育てが完了した方だけではなく、子どもをもうけていない夫婦も含まれています。(※3)
内閣府の離婚と子育てに関する世論調査(令和3年10月調査)によると、未成年の子がいない夫婦が離婚について「夫婦の一方でも離婚を望んでいるのであれば、離婚した方がよい」と答えた方は42.4%に達しています。
さらに、同統計では「夫婦の双方が離婚を望んでいるのであれば、離婚した方がよい」と答えた方の割合も43.1%に達しており、養育が必要な子どもがいないなら、スムーズに離婚しても良いと考える方が多い様子が伺えます。(※4)
子どもの成人を待った上で離婚するべきか悩む人も多いでしょう。ぜひ以下関連記事もお読みください。
参考記事:子供が成人するまで待って離婚するのは得策?メリットとデメリットを弁護士が解説
(※2)参考文献: WHITE, L. K., BOOTH, A., & EDWARDS, J. N. (1986). Children and Marital Happiness: Why the Negative Correlation? Journal of Family Issues, 7(2), 131-147.
(※3)参考URL:厚生労働省 令和4年度 離婚に関する統計の概況
(※4)参考URL:内閣府 離婚と子育てに関する世論調査(令和3年10月調査)
3.介護をしたくない
熟年離婚を検討する方の中には「介護をしたくない」という意志をお持ちの方もいます。介護問題とは主に以下の2点です。
- 配偶者側の家族の介護をしたくない
- 配偶者の介護をしたくない
介護は食事・排泄を介助するだけではなく、入通院の付き添いや資金面の援助など、さまざまな苦労をともないます。介護問題に直面する前に、離婚をして自由になりたいという方も少なくありません。特に夫の母・父の介護は妻に負担が求められやすい問題です。どれだけ介護を頑張っても配偶者側の父や母の法定相続人にはなれないため、苦労が周囲の人に理解・評価されにくいというデメリットもあります。
また、性格の不一致などを理由に夫や妻を介護する前に離婚したいという方も少なくありません。
4.お金の問題が解決している
夫婦それぞれに十分な財産がある場合、離婚後の不安要素が少ないため離婚に踏み切りやすくなります。
離婚前に夫婦いずれかの収入を頼りに生活していると離婚しにくいですが、すでに双方がお金に困ることなく自立していたり、資産形成ができている場合は高齢になっても困窮しにくいと予想できるため、離婚に至りやすいでしょう。
ただし、夫婦共有の財産は離婚時に分割されるため、慎重に「財産分与」を進めていく必要があります。熟年離婚は婚姻期間が長いため、夫婦共有の財産も高額になる傾向があります。法的アドバイスがないまま離婚に同意してしまうと、もらえたはずの財産が受け取れないおそれもあります。
財産分与には請求できる期間に限りがあり、離婚が成立してから2年以内に財産分与を請求しなければ、請求できる権利が消滅してしまうため注意が必要です。
お金がなかったら熟年離婚は我慢するべき?
長年積み重なったすれ違いから、離婚を検討する方が多い熟年夫婦の中には「お金」への不安から離婚に二の足を踏む方も少なくありません。では、お金がなかったら熟年離婚は我慢するべきでしょうか。結論から言うと、弁護士に相談を行い、今後の生活も見据えた上で離婚を協議することが大切です。
離婚後も安心して暮らすためには、離婚前にお金に関する問題点を解決しておく必要があります。専業主婦だった方やすでに退職済みの方であっても、財産分与や年金分割などの協議を十分に行い、生計を維持していくため財産確保を行えば離婚できる可能性は十分にあります。
▼詳しくは以下のリンクもご確認ください。
熟年離婚とお金
借金がある場合はどうする?
住宅ローンや教育資金など、お金を借りている夫婦も多いでしょう。また、会社経営や事業者の方は事業に関係する借金を背負っているケースもあります。
ローンなどの借金がある場合、離婚後誰が返済を続けていくのか等の問題点を整理する必要があります。特に注意したいのは、夫婦がともに連帯債務者や連帯保証人になっているケースです。
離婚で夫婦関係が終わっても連帯債務者や連帯保証人が解消されるわけではありません。離婚後に元配偶者が返済できなくなり、債務者から返済を迫られるおそれもあります。特に高額の残債がある場合は、お金の問題を離婚後に引きずらないためにも弁護士へご相談ください。
熟年離婚の原因
熟年離婚の理由の多くが「性格の不一致」です。
よく夫が突然、妻に「離婚したい」と切り出されるケースがありますが、これは長年にわたり
- 夫が家庭を顧みなかった
- 夫の暴言や暴力に耐えていた
- 夫が浮気を重ねていた
といったことが続いており、夫にとっては「日常のこと」となっていても、妻には耐え難い状態であることが多いのです。
そういう状態が続くと、妻は「もうだめだ、離婚しよう」という固い決意を持つことになります。しかし
- 今は子どももいるし無理だ
- 今はお金がないから無理だ
と耐えていて、そして
- 子どもが独立した
- 夫が退職して退職金を手に入れた
といったタイミングを機に、突然離婚を迫られるケースが非常に多いです。
離婚原因を決めておこう
離婚後の生活やお金、きり出すタイミングなどは想定していても、意外と揉めるのが「離婚の原因」です。ここで言う原因とは冒頭に挙げたようなものではなく、法で定められた「離婚事由」です。離婚事由には以下の項目があり、このいずれかに該当する必要があります。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
いくら「離婚したい!」と言っても、正当な理由なしに成立するものではありませんので、必ず離婚事由を頭に入れ、そして「どこに該当するか」まで考えておきましょう。
▼詳しくはこちらをご覧ください
離婚する際に大切な【離婚事由】について
熟年離婚とお金について
お金については、熟年離婚の場合は離婚を切り出す側がある程度調べておくことが多いようですが、非常に争点になりやすいので、今一度しっかりと確認しておきましょう。
一方が財産を隠し持っていた、気づかないで相続していた財産があったなどということもあります。弁護士が調査して発覚したようなこともありますので、気になるようであれば弁護士に相談するのもいいかもしれません。
▼熟年離婚とお金について詳しくはこちら
熟年離婚とお金について押さえておきましょう
スムーズな離婚を目指しましょう
離婚問題は様々な複雑な状況が絡み合い、大変長期化することが珍しくありませんが、長期化すると双方疲弊してしまい、折り合いがつかないまま争いが続いてしまうこともしばしばです。
熟年離婚される方は残された時間をもっと大切に考え、意地にならずに場合によってはお互いに条件を譲り合うことも必要な場合もあります。
とはいってもどこまで、譲歩しても良いのかという点は非常に見極めが難しいこともあります。
茨城県でたくさんの離婚問題を解決してきた私たち法律事務所DUONは、熟年離婚のご相談も多くお受けしています。
初回相談料は無料ですので、ご遠慮なくご連絡くださいませ。