離婚調停調書とは何か?公正証書との違いやその後の手続、注意点について

離婚をする際には、配偶者との間で、親権や養育費、面会交流の取決め、財産分与や慰謝料の支払いなど、様々な取り決めをする必要が出てきます。
これらの取決めをどのような形で残すのが良いのか、気になっている人も多いことでしょう。
離婚の際の取決めを記す書面として代表的なものに、調停調書があります。
本稿では、この調停調書について、そもそもどんなものなのかや、公正証書との違い、作成後の手続、注意点などについて解説していきます。

1 離婚の調停調書とは何か

1-1 調停前置主義

離婚協議が整わない場合、離婚したい配偶者は、いきなり離婚裁判を提起することはできないとされています。
離婚に関して裁判所の手続を利用する場合、まずは、家庭裁判所に「離婚調停(正しくは「夫婦関係調整調停」といいます。)を申し立てることになります。
このことを調停前置主義と言います。

1-2 調停は「話し合いの場」

調停は、どちらの言い分が正しいかを判断する場ではなく、調停委員や担当の裁判官らを介し、双方の言い分を調整して、離婚や離婚に伴う諸条件について合意を形成しようとするものです。
その意味で、離婚調停は、裁判所における当事者の「話し合いの場」といえます。

1-3 調停調書は当事者の合意を記載した書面

「話し合いの場」である調停で、離婚や離婚の条件について合意した内容を記載したものが「調停調書」です。
離婚や離婚の条件が合意に至ったら、裁判官がその合意内容を当事者の前で読み上げ、間違いがないかどうか確認します。
その後、確認した内容を裁判所書記官が書面化して「調停調書」が完成することとなります。

2 調停調書の効力

2-1 確定力

先にも述べた通り、調停は当事者が合意に至って成立するもので、調停調書はこれを記載したものです。
ですので、不服申し立てをすることができず、内容が確定します。
これを確定力と言います。

2-2 執行力

もうひとつ重要な効力に執行力があります。これは「調停調書に基づいて強制執行ができる」という効力です。
先ほどもお話ししたように、離婚の調停調書には、親権の他、養育費の支払いや財産分与、慰謝料の支払いなどについて記載されています。
例えば、元夫が元妻に対して養育費の支払いをしなければならないにもかかわらずこれを怠った場合には、調停調書に基づいて、給与を差し押さえて取り立てることができるのです。

3 調停調書と公正証書の共通点や違い

3-1 公正証書とは何か

離婚の取決めを記載する書面として、「公正証書」という言葉を聞いたことがある人も少なくないでしょう。
公正証書とは、公証役場というところで公証人が作成する公文書で、離婚の場合には協議離婚の際に作成されることが多いものです。
夫婦間の協議で離婚する際に離婚そのものや離婚条件について作成するのが公正証書、離婚調停を申し立てて作成するのが調停調書と覚えておくとよいでしょう。

3-2 調停調書と公正証書の共通点

公正証書の場合も調停調書の場合も、年金分割の合意については、分割する側が年金事務所に行って手続をすれば足りるとされています。

3-3 離婚調書と公正証書の違い

3-3-1 離婚の届出

調停調書による離婚の場合は、夫婦の一方(通常は戸籍から抜ける当事者)が離婚届と調停調書を市区町村役場に届け出れば足ります。
しかし、公正証書による離婚の場合は、別途離婚届に夫婦双方が署名捺印して、市区町村役場に提出する必要があります。

3-3-2 金銭支払いについて

先ほどもお話しした通り、離婚には、養育費や財産分与、慰謝料などの金銭支払いが伴います。
調停調書には執行力があり、これに基づいて、不払いがある場合には、財産や給与を差し押さえて取立ができることも先ほどお話しした通りです。
これに対して、公正証書の場合には、金銭支払いについて執行力を持たせるために、強制執行認諾文言というものを付す必要があります。
強制執行認諾文言が付されて、初めて、調停調書の場合と同様、不払いの場合に取り立てることが可能となります。

3-3-3 面会交流について

離婚した夫婦の間に子どもがいる場合、離婚に際して、別居親と子どもの面会交流の取決めがなされ、調停調書や公正証書に、頻度や時間、場所、受け渡しの方法などが記載されることになります。
面会交流が合意したとおりに実施されない場合、調停調書が作成されたていれば、これに基づいて裁判所に対して履行勧告や間接強制といった手続を採ることが可能です。
一方、公正証書による場合には、すぐに上記の手続を採ることはできず、別途面会交流調停を起こす必要があります。

3-3-4 かかる費用について

離婚調停は、申立手数料や予納する郵便切手を合計して数千円で申し立てることができ、調停調書の発行も1枚につき150円で足ります。
一方、公正証書の作成には、財産分与や慰謝料の金額等によっても変わりますが、少なくとも数万円の費用が必要となります。

4 調停調書の内容チェックで注意する点

4-1 離婚届の届出義務者はどちらか

離婚の調停調書が作成されても、それだけで自動的に戸籍上離婚の事実が反映されるわけではありません。夫婦のいずれか一方が、調停調書ができた後に市町村役場に届け出る必要があります。
夫婦のどちらが届出義務者になるかは、調停調書の文言に現れることとなります。
具体的には、調停調書に「申立人と相手方は、本日調停離婚する」と記載される場合には、申立人が届出義務者となります。
一方、調停調書に「申立人と相手方は、相手方の申し出により、本日調停離婚する」と記載される場合には、相手方が届出義務者となります。

4-2 親権者の指定

現在、離婚後の共同親権導入に向けた議論が進んでいる最中ですが、現在日本では、離婚後は父または母のいずれか一方による単独親権となっています。
夫婦の間に子どもがいる場合、離婚後の親権者が合意できた当事者に間違いなく指定されているか確認しましょう。

4-3 養育費の金額や支払い時期、方法

子どもがいる夫婦が離婚した場合には、通常、別居親が養育費を支払うこととなります。
月々の養育費の金額、支払日、振込の場合の指定口座など、細かいところまで間違っていないか確認することが必要です。

4-4 面会交流の頻度、時間、方法

夫婦に子どもがいた場合、離婚後の別居親と子どもの面会交流の実施についてもめることが少なくありません。
離婚後の子どもをめぐるトラブルを避けるためには、離婚時に取り決めた面会交流の内容をしっかり確認しておくことがとても大切です。
頻度や1回の時間、受け渡しの方法や場所など、取り決めた通りに記載されているか確認を怠らないようにしてください。

4-5 財産分与や慰謝料の金額、支払時期・方法

財産分与や慰謝料は、金額が大きいことが多く、支払も離婚成立から少し先になったり分割になったりすることがあります。
取り決めた内容が間違いなく記載されているか、確認をするようにしてください。
また、財産分与の対象に、不動産や自動車など名義変更が必要なものが含まれる場合には、名義変更が単独申請なのか共同申請なのかで表記方法が異なります。
通常、調停離婚の場合は、受け取る側の単独申請で名義変更が可能ですが、記載内容によって共同申請しなければならないこともあるので、確認しておくことが必要です。

5 調停調書で離婚届を提出する期間や方法

調停離婚の場合には、調停成立時に離婚が成立します。そして、成立した日から10日以内に、市区町村役場に離婚届をすることが必要となります。
離婚届を出す場合には、調停調書そのものか、届出に必要な事項のみ(離婚の事実、親権者)を記載した届出用抄本を市町村役場に持参する必要があります。
通常は、届出用抄本を裁判所から交付してもらえるので、それを持参して届出をすることとなります。
その他、印鑑(三文判で問題ありません。)や官公署発行の身分証明書、本籍地以外の市町村役場に届け出る場合には戸籍謄本が必要となりますので、忘れないようにしましょう。
なお、離婚成立日から10日を過ぎた届出は受理されないわけではありませんが、場合によっては、5万円以下の過料という制裁を科されることもあるので、注意が必要です。

6 その他調停調書で注意する点

滅多にあることではありませんが、名前の表記等人物を特定する事項に誤記がある場合には、届出用抄本を持参して離婚届を出そうとしてもできない場合があります。
調停調書や届出用抄本が発行された場合には、自分や相手の名前等に誤りがないか確認してもらい、誤りを見つけたらすぐに更正をするよう裁判所に手続してください。

7 最後に

DUOでは各種の法律相談を基本的に初回無料で承っています。
弁護士に相談するだけで心が軽くなり、問題解決の糸口をつかめるケースも少なくありません。
相談したからといって依頼しなければならないわけでもありません。
お悩みを抱えている場合には、お気軽に法律相談をご利用ください。

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