離婚後に生活保護を受けるために条件と、養育費をもらっている場合はどうなるかを弁護士が解説

離婚後、自活するのが難しいために生活保護を受けようとする方も少なくありません。

生活保護を受給するには一定の条件を満たす必要があります。
申請するための手続き方法や注意点も把握しておきましょう。

今回は離婚後に生活保護を受けられる条件や申請方法など、押さえておくべき知識をご紹介します。

1.離婚後に生活保護を受けるための条件

1-1.そもそも生活保護制度とは

生活保護制度とは、収入を得られず資産もなく、自力では最低限の生活も維持できない方へ向けて、最低限度の生活費を支給してくれる行政サービスをいいます。

婚姻中に配偶者の収入によって生活されていた方は、離婚すると生活に困ってしまうケースが少なくありません。
自分ではたらいて収入を得られれば生活できますが、小さい子どもを抱えて就職もままならないケースも多々あります。持病があってはたらけない方もおられるでしょう。
そんなときに役立つのが生活保護です。

生活保護を受けられたら、国から最低限度の生活費が保障されます。医療費も無料となりますし、税金や保険料を支払う必要もありません。

生活保護は、離婚後の生活におけるセーフティネットといえるでしょう。

1-2.生活保護の受給条件

生活保護の主な受給条件は以下のとおりです。

  • 収入がない、少ない
  • 資産がない
  • 親族からの援助を受けられない
  • 他の公的支援を受けても生活できない

以下でそれぞれについてみていきましょう。

1-3.収入がない、少ない

生活保護を受けるには、収入がないか少ない状況を要求されます。
自分で十分な生活費を稼げる人には反故の必要性がないからです。
具体的には、世帯収入が厚生労働省の「最低生活費」基準未満でなければなりません。
最低生活費は全国の地域や世帯人数、年齢などによって異なります。

なお生活保護を受けるのに「はたらけない」「無収入」は必須ではありません。
仕事をしている方や年金生活者でも、最低生活費に不足する場合には、不足額が生活保護費として支給されます。

1-4.資産がない

次に「資産がない」ことも必要です。
たとえば現金や預金などがある場合には、それらを先に生活費に使ってなくなってから生活保護の申請をしなければなりません。

現預金以外に、不動産や車、株式、積立型の保険なども資産となります。

こういったものをお持ちの方は、まずは取り崩して生活してから生活保護の申請をしましょう。

1-5.親族からの援助を受けられない

3つ目に、親族からの援助を受けられない状況も必要です。
親族には扶養義務があるので、お互いに経済的に助け合わねばなりません。
親族から支援を受けられるなら、保護の必要性がないので申請がとおらないのです。

実際に生活保護の申請手続きをとると、福祉事務所が本人の3親等内の親族へ連絡を入れて、生活支援できないか確認します。
ここで「生活支援が可能」という返答が来たら、生活保護の申請はとおりません。

なお離婚した相手との間に未成年の子どもがいる場合、相手にも福祉事務所から連絡され扶養の可否を尋ねられます。相手には子どもに対する扶養義務があるからです。
18歳以下の子どもがいる場合に生活保護を申請すると、元配偶者へ生活保護を申請しようとしていることを知られると考えましょう。

1-6.他の公的支援を受けても生活できない

生活保護を受給するには、他の公的支援を受けても生活できないことが必要です。
生活保護は、生活を保持するための「最後の手段」という位置づけだからです。

たとえば年金やひとり親家庭への支援制度を使えば生活できる状況であれば、生活保護の申請がとおりません。
ひとり親への支援制度には児童扶養手当をはじめとしてさまざまなものがありますので、まずはどういった制度があるのか調べてみましょう。

2.養育費をもらっていても生活保護の受給は可能

離婚後、相手から子どもの養育費を払ってもらっている場合、「生活保護を受けられないのでは?」と不安を感じる方が少なくありません。

結論的に、養育費を受け取っていても生活保護の受給は可能です。ただし受け取った養育費の金額分は保護費から減額されます。

自分ではたらいて収入がある場合でも養育費をもらっている場合でも、生活保護費として受け取れるのは「最低生活費に不足する部分のみ」となります。
養育費をもらっていると、その分保護費を満額されると考えましょう。

養育費を受け取っているのに申告せずに生活保護費を満額受け取ると不正受給となってしまいます。不正受給が発覚すると受け取った分を返還しなければならない可能性もあるので、やってはいけません。

3.離婚後の生活保護費の金額の目安

生活保護の受給額は、地域や世帯員の年齢、世帯人数などの条件によって大きく異なります。
基本的には世帯人数が多く、都市部であれば生活保護費は上がります。
たとえば独身者が1人であれば10~13万円程度、子どもが1人いれば18~20万円程度、子どもが2人いれば20~26万円程度が目安となるでしょう。

ただし上記はあくまで参考値なので、詳細はお住まいの地域のケースワーカーへ問い合わせて確認してください。

4.離婚後の生活保護申請の流れや手順

離婚後、生活保護を申請する際の流れや手順をみてみましょう。

4-1.事前準備

生活保護を受けるには、資産がなく親族からの援助を受け取れないなどの要件を満たさねばなりません。まずは条件を満たしているかどうか、確認しましょう。たとえば資産があったら先に使ってしまわねばなりません。

また相手から養育費を受け取っていない場合、請求しましょう。
どうしても支払いを受けられない場合や生活に不足する場合、生活保護の申請を進めてください。

4-2.ケースワーカーへ相談する

次に地域の福祉事務所へ行き、ケースワーカーへ生活保護申請の相談を行います。
ケースワーカーとの面談の際には家族構成や資産、収入状況、養育費の受け取り状況などさまざまなことを尋ねられるので、事前に考えておくとよいでしょう。
また必要書類を用意しておくとスムーズなので、事前にそろえておいてください。

必要書類

  • 身分証明書(運転免許証、健康保険証など)
  • 印鑑(認印でも可)
  • 戸籍謄本(離婚がわかるもの)
  • 住民票(世帯全員分)
  • 通帳や給料明細
  • 障害者手帳や診断書(病気のために働けない場合)

4-3.生活保護を申請する

生活保護は、居住する自治体の「福祉事務所」にて行います。
生活保護担当の窓口へ行くと、事前相談を経て調査を開始されます。
調査では、収入や資産等の有無や金額、元配偶者を含む3親等内の親族へ扶養できないか確認されるなど、さまざまな事項が調べられます。

調査の結果、生活保護の受給条件を満たしていると判断されれば受給の決定が降りて、生活保護費を受け取れるようになります。

5.生活保護受給中の注意点

5-1.資産を持てない

生活保護を受給してからも、資産を持つことはできません。
たとえば何らかの収入があって高額な預金ができると、そちらを先に取り崩してから生活保護を受け直す、あるいはこれまで受け取った保護費を償還するように指導されてしまいます。

保護費を償還してもあまりがあると、生活保護を打ち切られてしまう可能性もあります。

車や不動産などの資産も持つことができません。
遺産相続した資産や交通事故の損害賠償金なども、取得したら保護費として償還しなければならないので、手元に残すことは基本的にできないと考えましょう。

ただし子どもの学費のためなどの事情があれば一定額の預金が認められるケースもありますし、冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどの生活に必要な物品の所有は認められます。

いずれにせよ無報告で資産をもっていると問題になる可能性があるので、わからないことはケースワーカーへ相談しましょう。

5-2.借金できない

生活保護を受給している間は、借金ができません。
生活保護費は最低限の生活を守るための費用であり、借金返済に充てるのは不適切と考えられているためです。
福祉事務所の指導にもかかわらず借金すると、保護費の支給を打ち切られる可能性もありますし、すでに受け取った保護費の返金を求められるリスクも発生します。

もしも借金してしまった場合やもともと借金があって生活保護を受けたい場合、自己破産をして借金をなくさねばなりません。困ったときには弁護士へ相談しましょう。

5-3.家賃額が限定される

生活保護受給中は一般的に持ち家を持てないので、「賃貸物件」に居住する方が多数です。
このとき、賃貸物件の選択が限定される可能性があります。
基本的には「住宅扶助の上限額以内」の賃料の物件を選ばねばなりません。
高額な家賃の家に住んでいる場合、引っ越すように指導されてしまいます。

5-4.役所への報告義務

生活保護受給中は、福祉事務所や役所による監督を受けます。
預貯金口座をチェックされ、収入があれば報告をしなければなりません。
必要な報告を怠って不正受給とみなされると高いリスクが発生するので、必ず誠実に報告しましょう。

6.不正受給した場合のリスク

実際に不正受給になるとどういったリスクが発生するのか、ご説明します。

6-1.保護費の返還

生活保護費の不正受給が発覚すると、これまで受け取った保護費を返還するようにいわれるケースが多数です。

6-2.保護の打ち切り

不正受給が発覚すると、保護費の支給を打ち切られる可能性もあります。

6-3.再度の申請が困難になる

いったん不正受給によって保護費が打ち切られると、次に申請をしても受け付けてもらえない可能性が高まります。そうなったら最後のセーフティネットも受けられずに本当に生活に困ってしまうでしょう。

生活保護の不正受給には高いリスクがついてまわるので、絶対にやってはいけません。

7.生活保護の申請は弁護士へご依頼を

生活保護の審査は年々厳しくなっており、受給条件を満たしていても簡単には通りにくくなっています。
しかし受給条件を満たしていれば、生活保護を断られる理由はありません。あきらめずに申請しましょう。自分で手続きを行うと断られるケースでも、弁護士を通じて申請すれば受け付けてもらえるケースが多々あります。弁護士に任せるとケースワーカーとの交渉や書類の作成などを代行できるので、自治体側も無碍に申請を拒めなくなるものです。

茨城の弁護士法人DUONは離婚した方への法的支援に力を入れて取り組んでいます。生活保護を検討している方へも親身になってサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。

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