【過度に何かにのめり込む配偶者】と離婚できる?パターン別に弁護士が解説
ゲーム、ギャンブル、宗教、政治活動、出会い系サイト、etc...
なにかに「のめり込んでしまう人」は少なくありません。
単なる趣味の範囲内なら許容できても、お金を使い込んだり家族生活を放棄したり、配偶者へ宗教や政治活動を強要したりする人も存在します。
夫や妻が趣味や宗教などに過度にはまり込んでしまった場合、離婚できるのでしょうか?
今回は過度になにかにのめり込んでしまった配偶者と離婚できるのか、手順などを含めて弁護士が解説します。
夫や妻がゲームやギャンブル、宗教や出会い系サイトにはまってしまって困っている方、宗教や政治活動などを強要されている方はぜひ参考にしてみてください。
1.相手が同意すれば何が原因でも離婚できる
配偶者がゲームやギャンブル、宗教などにのめり込んでしまった場合、離婚できるのでしょうか?
答えは配偶者が離婚に応じるかどうかで変わります。相手が離婚に応じるならどういった理由でも離婚が可能です。一方、相手が拒否する場合には離婚できない可能性があります。
1-1.相手の同意により離婚する方法
日本の法律では協議離婚や調停離婚が認められています。
協議離婚とは、夫婦が離婚に同意して離婚届を作成し、役所へ届け出る方法の離婚です。
調停離婚とは、家庭裁判所で話し合って合意する方法の離婚です。
協議離婚や調停離婚の場合、離婚原因は問題になりません。夫婦双方が「離婚すること」に合意さえすれば離婚が成立します。
1-2.相手の同意を得て離婚する手順
相手がゲームやギャンブル、宗教などにはまって我慢できないなら、まずは相手に離婚を持ちかけてみましょう。相手が納得すれば離婚届を提出するだけで離婚できます。
協議離婚では養育費や財産分与などの離婚条件を決める必要もありません(親権については決める必要があります)。ただ離婚後のトラブルを予防するために、以下のような条件も取りまとめておきましょう。
- 財産分与
- 慰謝料
- 年金分割
- 養育費
- 面会交流
離婚に関する約束事は公正証書にしておくようおすすめします
2.訴訟で離婚するには「法定離婚理由」が必要
協議や調停で離婚するには、相手が離婚に同意しなければなりません。離婚条件に折り合いがつかないと離婚が実現しない可能性もあります。
相手が離婚を拒否する状況下で離婚するには「訴訟」で離婚を認めてもらわねばなりません。
ただ訴訟では必ずしも離婚が認められるとは限りません。「法定離婚理由」が必要となります。
2-1.法定離婚理由とは
法定離婚理由とは、民法が定める以下の5つの離婚原因です。
- 不貞(肉体関係を伴う不倫)
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復しがたい精神病
- その他婚姻生活を継続し難い重大な事情
相手がゲームやギャンブル、宗教や政治活動などにはまり込んだ場合でも、上記に5つのうちいずれか1つ以上に該当するなら訴訟で離婚を認めてもらえる可能性が高いと考えましょう。
2-2.具体的な事情により、法定離婚理由があるかどうかが異なる
「配偶者が過度になにかにのめり込んだこと」は直接的な法定離婚理由にはなりません。
ただしのめり込んだ配偶者が不倫したり生活費を払わなくなったりして、法定離婚理由に該当する可能性はあります。また夫婦関係が極度に悪化して「その他婚姻関係を継続し難い事情」が認定されるケースもあります。相手が何かにのめり込んでいる場合の離婚の可否は、個別具体的な状況によって異なるといえるでしょう。
以下では相手がはまり込んでいる事柄の内容別に、法定離婚理由に該当するかみていきます。
3.ゲームにのめり込んでいる場合
相手がゲームにのめり込んでいて家庭生活をないがしろにしている場合、法定離婚理由は認められるのでしょうか?
「ゲームにはまり込んでいる」というだけでは法定離婚理由になりません。
ただし以下のような場合には法定離婚理由が認められる可能性があります。
- ゲームに課金しすぎて生活費を払ってくれなくなった
- ゲームにのめり込んで会話がなくなり家庭内別居状態になるなど、夫婦関係が極度に悪化している
- お互いに嫌気がさして別居した
- 相手から暴力を振るわれている
- 相手がゲームで知り合った異性と不貞している
上記は一例であり、ゲームに関連する別の要因がある場合でも離婚できる可能性はあります。法定離婚理由があれば離婚できるので、困ったときには我慢せずに弁護士に相談しましょう。
4.宗教や政治活動にのめり込んでいる場合
相手が宗教や政治活動にのめり込んでいる場合、離婚できるのでしょうか?
こちらについても「法定離婚理由」が存在するかどうかによって異なります。
ただ宗教や政治活動については、憲法の保障する「信教の自由」や「政治活動の自由」と関連するので、ゲームなどの一般的な事柄とは性質を異にします。
(信教の自由)
憲法第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
(表現の自由)
憲法第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
相手にも信教の自由や表現の自由が認められるので、相手が「宗教にはまっている」「政治活動にはまっている」というだけでは離婚が認められないと考えましょう。
ただし相手から入信や政治活動を強要されるなら、こちらの信教の自由や表現の自由が侵害されているといえます。そういった状況であれば離婚が認められる可能性も出てきます。
また以下のような場合には、相手の宗教や政治活動を理由に離婚が認められやすいといえるでしょう。
- 相手が宗教や政治活動を強要してくる
- こちらが宗教や政治活動に理解を示さないと暴力を振るわれる
- 相手が同じ宗教や政治活動家の異性と不貞している
- 相手が宗教や政治活動にはまって家に帰ってこない
- 相手が宗教や政治活動に生活費を使い込んで、夫婦生活が困窮している
- 宗教や政治活動が原因で不仲になり家庭内別居や現実の別居状態となった
- お互いに夫婦をやり直す意思がなくなった
宗教や政治活動は憲法の基本的人権とも関連するナイーブな問題です。
お困りの際には一度、弁護士までご相談ください。
5.出会い系サイトにのめり込んでいる場合
人によっては出会い系サイトやアプリにのめり込んでしまうケースもみられます。
出会い系サイトにはまったら「不倫」「浮気」になるので離婚できると考える方も多いでしょう。しかし出会い系サイトを使ったからといって、必ずしも法律上の「不貞」になりません。
法律上は「不貞」が成立しないと法定離婚理由にならないので、相手が出会い系サイトにはまっていても離婚できない可能性があります。不貞とは、既婚者が配偶者以外の人と肉体関係を持つことです。
以下のようなケースでは不貞が成立するので離婚できる可能性があります。
- 夫や妻が出会い系サイトで知り合った人と肉体関係を持っている
それ以外にも、以下のような状況があれば離婚が認められる可能性があります。
- 配偶者が出会い系サイトに課金しすぎて生活が困窮している
- 配偶者が出会い系サイトにはまって家に帰ってこない
- 出会い系サイトについて咎めると暴力を振るわれる
一方で、以下のような場合には離婚できない可能性が高いでしょう。
- 配偶者が出会い系サイトを使っているが、実際には相手と会っていない
- 出会い系サイトで知り合った人と会っている様子だが、肉体関係はもっていない
配偶者が出会い系サイトを使っていて離婚したい場合、肉体関係をもっていることを示す証拠を集めておくべきです。証拠集めでは慎重な対応が必要となるので、自己判断で動かずに弁護士に相談しましょう。
6.ギャンブルにのめり込んでいる場合
配偶者がギャンブルにのめり込んでいたら、婚姻関係の継続が難しくなって「離婚したい」と考える方も多数おられます。
ただギャンブルにはまっているからといって、それだけで離婚できるとは限りません。相手が離婚に合意しない場合、法定離婚理由が必要です。
相手がギャンブルにはまり込んでいて法定離婚理由が認められやすい状況として、以下のような場合が考えられます。
- ギャンブルに生活費を使い込み、家族の生活が困窮している
- ギャンブルを咎めると暴力を振るわれる
- 相手のギャンブルが原因で不仲となり、家庭内別居や実際の別居となった
- お互いに夫婦関係を修復しようという気持ちがなくなっている
7.相手がなにかにのめり込んだ場合、慰謝料を請求できる?
相手がゲームや宗教などにのめり込んで離婚する場合、慰謝料を請求できるのでしょうか?
これについても個別具体的な事情によって異なってきます。
慰謝料を請求できるのは以下のような場合です。
不貞が成立する場合
相手がゲームや出会い系サイトで知り合った相手などと肉体関係を持って不貞が成立すれば、相手や不倫相手に慰謝料請求できます。
暴力を振るわれた場合
相手が過度になにかにはまり、咎めると暴力を振るわれる場合などには慰謝料を請求できる可能性が高くなります。
モラハラを受けた場合
たとえば宗教や政治活動を強要されると一種のモラハラ行為といえるでしょう。慰謝料請求できる可能性があります。
生活費を払ってくれなかった場合
相手がゲームや出会い系サイト、宗教などにはまり込んで課金し、生活費を払ってくれなくなったら慰謝料請求できるケースが多数です。
家出された場合
相手がなにかにはまり込むあまり家庭生活を打ち捨てて家出した場合には慰謝料請求できる可能性が高くなります。
セックスレスになった場合
相手が出会い系サイトなどにはまり込んでセックスを理由なく拒否するようになり、拒否された側が精神的苦痛を受けると慰謝料請求できる可能性があります。
夫や妻が過度になにかにのめり込むと、配偶者としては大きな迷惑を被ることもよくあります。離婚を考えたら、まずは弁護士に相談して対策を検討しましょう。DUONでは離婚問題に積極的に取り組んでいますので、お困りの際にはお気軽にご相談ください。