親権をとるにはどうすれば良いか(後編)
前回のコラム「親権をとるにはどうすれば良いか(前編)」の続きです。
子の意思は考慮されるか
子がおおむね10歳以下である場合は、子どもの意見はあまり重要視されない傾向にあります。
その理由は、判断能力が不十分であるからです。「5、6歳の子供の場合、周囲の影響を受けやすく、空想と現実とが混同される場合も多いので、たとえ一方の親に対する親疎の感情や意向を明確にしたとしても、それを直ちに子の意向として採用し、あるいは重視することは相当でない」とした裁判例があります。
小学校1年生の子の意思能力に関して、子が母親との同居を拒否して父との同居を希望しているケースにおいて、小学校1年生であるから可遡性があるとして、子の意思とは反対の結論を導いた裁判例があります。
おおむね10歳以上であれば、子は意思を表明する能力があるとするが通例です。家庭裁判所の調査官によって、子に対するヒアリングが行われ、判断能力の有無等を考慮の上、子の意思について評価がされます。
子が15歳以上である場合は、子の意思が尊重されます。子が満15歳以上の場合、家庭裁判所、監護者の指定や変更に当たり、子の陳述を聞かなければならないとされています(人事訴訟法32条4甲、家事審判規則54条、70条、72条)。
このようなことから、15歳以上というのが一つの基準となって、子の意思が反映されやすくなります。
家庭環境を整える
子の家庭環境としては、経済的に収入の多い方が良いでしょう。もっとも、母親が親権をとる場合には、父親から支払われる養育費も考慮に入れることができると考えられます。したがって、就労意欲がなく、生活に窮することが予想されるような特別の場合を除いて、経済力の差は、他の要素に比べるとあまり重要視されません。
金持ちであれば、あるほど子が幸せかというとそうではないでしょう。経済的に裕福な家庭でも、親が帰ってこない家庭が、子にとって幸福だとは考えられません。
もっとも、離婚後は、母親も仕事をせざる得ませんから、親に面倒を見てもらったりしる必要があるでしょう。
浮気をして離婚原因を作った親は、親権者に向かないのかという問題があります。しかし、離婚原因を作ったことと、子供を監護する能力は別であることから、あまり、離婚原因を作ったかどうかは、関係がありません。
兄弟不分離
子が幼ければ幼いほど、兄弟は同じ親に面倒を見てもらうのが良いと考えられています。兄弟同士切磋琢磨して成長していく課程を重視しています。
もっとも、他の判断要素との関係では、それほど重要視されている原則ではないと思います。しかし、両親ともに子の親権を欲しがっている場合に、安易に幼い兄弟を分離すべきではありません。
面会交流
面会交流に積極的であるほど、親権者に向いているとされています。
離婚相手に悪感情を抱くあまり、子に対し、悪影響が出ることを恐れ、面会交流をいやがることがありますが、気持ちとしてはわかるものの、このような態度は親権者として望ましいものではないと考えられています。
たとえ、離婚原因を作りだした親であっても、子にとっては、親であることは変わりなく、子の成長にとって両親の存在が不可欠です。
面会交流は、子の権利であると考えられますので、子の利益に反する監護方針を持っているという評価をされてもやむ得ないでしょう。
子への愛情
最後に子どもへの愛情です。
自分の子どもがかわいいのはどの親でも同じです。
親権者の決定は、子の利益を優先的に考えるべきとされており、そうであれば、双方の目的は同じです。ただ、子どもがかわいいというだけでなく、子どものためにどれだけ親として考えられるか、自分が親の責任果たすことができるのかを考えることが大切です。
いずれにしろ、親権を巡って両親が対立している状況は子供にとって望ましい状況ではないのです。