父親が親権を取るケースが少ない理由は?親権を獲得したい男性が知っておくべきポイントを解説

日本では離婚したときに父親か母親のどちらか一方しか親権者になれません。その際、親権者として選ばれるのは「母親」となるケースが多数です。「父親」が親権をとるケースは多くありません。
なぜ母親が子どもの親権を取得しやすくなっているのでしょうか?理由を把握しておきましょう。

実際、男性には親権が認められにくいので、父親が親権を獲得したい場合、母親以上に押さえておくべきポイントがあるともいえます。

この記事では男性が親権を獲得しにくい理由や父親が親権を獲得するためのポイントについて、弁護士が解説します。

親権を取りたい男性の方はぜひ参考にしてみてください。

1.親権とは

親権とは、子どもの財産を管理したり子どもと一緒に過ごして観護養育したりするための親の権利です。
子どもの法律行為を代理する権限や子どもを懲戒する権限、子どもが仕事をする際に承諾する権限なども認められます。教育に関する決定権もあるので、子どもの進学先などは親権者が決定するのが一般的です。

日本では、離婚前は共同親権ですが離婚後は単独親権となります。共同親権とは両方の親に親権が認められる制度、単独親権とは片方の親にのみ親権が認められる制度です。
離婚後は単独親権しか認められないので、離婚する際には父親か母親のどちらか一方を親権者として指定しなければなりません。
父親と母親の両方が親権を主張すると親権者を決められないので、トラブルになってしまいます。これが、日本で親権争いが発生しやすい理由です。

婚姻時には親権があっても離婚時に相手に親権を譲ってしまったら、その後は子どもの親権者として振る舞うことができません。通常は監護者と親権者が一致するので、親権者にならなかったら子どもと一緒に住んで成長を見守るのも不可能となります。
子どもと一緒にいたい、子どもの成長を主体的に支えていきたい方にとっては離婚後に親権を取得することが非常に重要といえるでしょう。

2.親権を取得するための方法

親権はどのようにすれば取得できるのでしょうか?
親権を取得するには、以下の3種類の方法があります。

2-1.協議離婚で親権を取得する

1つは協議離婚で父親を親権者に指定する方法です。
協議離婚の際に、父親と母親が両方とも合意して父親を親権者に指定すれば、父親が親権者になれます。
ただし協議離婚で親権を取得するには、相手の合意が必要です。相手が譲らない場合、協議離婚では親権者になれません。

協議離婚で親権者を指定する方法

協議離婚で親権者を指定するには、離婚届の親権者の欄に父親の名前を書いて提出する必要があります。それ以外に特に難しい手続きは不要です。
ただしトラブル防止のためには離婚協議書を作成し、別の書面でも「父親を親権者とすることに合意した」と記載しておく方が良いでしょう。

2-2.調停離婚で親権を取得する

2つめの方法は、調停離婚で親権を取得するものです。
調停離婚では、夫婦が話し合いによって離婚条件を決定します。ここで相手が親権を譲ってくれれば父親でも親権者になれます。
ただし調停で親権を取得できるのは、相手が親権を希望しない場合に限られます。
相手も親権を希望する場合、お互いの溝が埋まらないので調停は不成立になって終わってしまいます。その場合、訴訟をしないと親権問題を解決できません。

2-3.訴訟で裁判所に親権者として指定してもらう

3つ目は、離婚訴訟で裁判所に親権者として指定してもらう方法です。離婚訴訟になると、裁判所が一定の判断基準にもとづいて親権者を決定します。訴訟は話し合いではないので、協議や調停のように相手の同意は要りません。

ただし離婚訴訟で男性が親権を認めてもらうのは簡単ではありません。女性側が有利になるケースが多いためです。
日本の司法においては、男性側は子どもの親権を取得しにくい状況があるのが現実です。

3.父親が親権を取得しにくい理由

なぜ父親は母親に比べて親権を取得しにくいのでしょうか?
以下で理由をみてみましょう。

3-1.養育実績が小さい。

子どもの親権者を決める場合には、これまでの養育実績が考慮されます。父親の場合、あまり子育てに主体的に関わってきていない方が多数おられます。そうなると、養育実績が低いとされて親権争いには不利になってしまいます。
主として養育に携わってきた母親が親権者として有利になってしまうのです。

3-2.子どもと一緒に過ごせる時間が少ない

次に、子どもと一緒に過ごせる時間が少ない問題を挙げられます。
日本で親権者を決める場合、離婚後にどのくらい子どもと一緒に過ごせるかが重視されます。婚姻時に主婦だった母親の場合、離婚後も急にははたらけませんが、子どもと一緒に過ごす時間は十分にとれるでしょう。それに対し、フルタイムではたらいている男性はなかなか子どもと過ごす時間をとれません。

そうなると、子どもと一緒に過ごせる時間の長い母親が親権者として優先されてしまうのです。

3-3.子どもが母親に懐いている

親権者を決める場合には、子どもの側の事情も考慮されます。
15歳以上の子どもの場合、自分で親権者を選べます。15歳以下であっても10歳程度になってくると、親権者を決定する際に子どもの意見も聞かれるようになってきます。
これまで主として母親に養育されてきたならば、子どもは母親の方へ懐いているケースが多いでしょう。そうなると父親と子どもの現在の関係があまり良くないものとして、親権争いには不利になってしまいます。

父親は子どもからの愛着をあまり得られないので親権争いに不利になってしまう可能性があるといえるでしょう。

3-4.乳幼児には母親が必要と考えられている

日本の裁判所では、「乳幼児期の子どもが健全に成長するには母親の愛情が必要」という考えが根強く残っています。そこで子どもが0~2、3歳までの場合などには女性側が親権者として有利になります。
子どもの年齢が小さすぎると男性にとって不利になりやすいので、覚えておきましょう。

4.母親が親権をとりにくいケース

母親であっても必ず親権を獲得できるとは限りません。
以下のような場合、母親でも親権を取得しにくくなります。

4-1.ある程度の年齢の子どもが父親による親権を望んでいる

親権者を決める際には、子どもの意見が尊重されるケースもよくあります。特に子どもが10歳以上になってくると、子どもの希望もある程度聞き入れられるようになりますし、15歳以上の子どもは自分で親権者を決められます。

ある程度成長した子ども自身が父親の親権を希望した場合、母親であっても親権をとりにくくなるといえるでしょう。

4-2.母親が忙しくて子どもと一緒に過ごす時間をとれない

近年では母親もフルタイム勤務する方が増え、必ずしも家で子どもと一緒に過ごせるわけではなくなってきました。
このように外で忙しく働いている女性の場合、親権獲得には不利になります。
裁判所では、忙しすぎて子どもと一緒に過ごせない場合には、親権者として不適格と考えられているためです。子どもが健全に成長するには、適切な監護が必要です。

母親が仕事に忙しくしすぎていて子どもをかまえない場合、父親にも親権獲得のチャンスが生まれてくるといえるでしょう。

4-3.子どもと一緒に住んでいない

裁判所が親権者を決める際には、子どもの現状が考慮されます。子どもの環境をあまり何度も変えるのは望ましくないので、現状が落ち着いていたらできるだけ維持しようと考えるのです。
そこで母親が子どもと一緒に住んでおらず、父親が子どもと暮らしている場合には父親が親権者として有利になります。

4-4.虐待している

母親が子どもを虐待していたら、当然母親には親権が認められにくくなります。
たとえば子どもに身体的な暴力を振るう、言葉で精神的に追い詰める、ご飯を与えないなどのネグレクト行動があると、母親であっても親権が認められにくくなるでしょう。

4-5.浮気・不倫をしている

母親が夫以外の男性と浮気・不倫をしていると、親権争いに不利に評価されるケースが多数です。
確かに不倫していても、子どもの養育さえしっかりしていれば親権を獲得できるとも思えます。しかし実際には、浮気にはまった女性は家庭や育児をないがしろにして男性との逢瀬にいそしむケースが少なくありません。そうなると、親権者として不適格だとみなされてしまいます。

妻が不倫や浮気している場合には男性側が親権獲得に有利になる可能性があるので、不倫・浮気の証拠をしっかり集めましょう。

4-6.母親が子どもの世話をしていなかった

親権者決定の際にはこれまでの養育実績が重要視されるので、母親であっても養育に主体的にかかわってこなかった経緯があれば不利になります。
父親が親権を獲得したければ、相手以上に自分から積極的に子どもの養育にかかわるべきといえるでしょう。

5.男性が親権を取るためのポイント

男性が親権を獲得するためにはどういった点に注意すれば良いのか、ポイントを確認していきましょう。

5-1.乳幼児期の離婚は避ける

まず子どもが乳幼児期であれば離婚を避けるようおすすめします。乳幼児の親権者は母親に認められてしまう可能性が高いためです。実際、父親は母乳を与えることができませんし、乳幼児の世話は主に母親が担っているケースも多いでしょう。
父親が親権を取りたいなら、子どもが小学校に入ってからにする方が無難です。

5-2.養育に積極的にかかわる

父親が親権者になりたい場合、養育に積極的にかかわる必要があります。
母親任せにしていたら、親権者としての適格性が認められにくくなるためです。子どもとの関係が形成されないので、子どもの方としても「父親と一緒に暮らしたい」とは希望しにくいでしょう。
子どもとの関係を良好にして養育実績を作るため、子どもの年齢に応じて積極的に子育てに関わり、忙しくても子どもと過ごす時間を作りましょう。

5-3.別居するときには子どもと離れない

夫婦仲が悪くなると、別居するケースが多々あります。このとき、親権を取りたければ子どもと離れないことが重要です。裁判所には、子どもが落ち着いて生活している場合、そのままの生活を維持しようとする傾向があるためです。
別居する際、家を出るなら子どもを連れて出ましょう。相手が出ていく場合には、相手に1人で出ていってもらう必要があります。

ただし無理やり子どもを連れ去って別居すると違法性があると判断され、子どもを取り戻される可能性が高まります。あくまで平和的な方法で別居し、子どもと離れないことが重要です。

6.男性が親権を獲得したければご相談ください

男性が親権を獲得するのは容易ではありません。これまでの仕事の方法や生活様式を一変しなければならないケースもあるでしょう。
ただでさえ不利になりがちな男性が親権を獲得するには、法律的な知識が必要です。

DUONでは離婚問題に積極的に取り組んでおり、男性側の代理人となって親権を獲得した実績も多数あります。いったん相手に子どもを連れ去られると、取り戻すのは困難です。親権を獲得したい父親の方がおられましたら、お早めに弁護士までご相談ください。

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